愛妻・ゆかりっちは、記念日を大事にするひとである。僕のバースデーは渋谷で尾崎牛を食したが、自分のバースデーも美味い焼肉が食べたいという。ならば、今度はどこの店をリザーブしようか?
候補は3店。恵比寿のチャンピオン、渋谷のばっぷHOUSE、そして、鶯谷園。いずれも、東京の美味い焼肉のベンチマークとなる店だ。愛妻のバースデーということを考えると、おしゃれな恵比寿、チャンピンが最有力だろうと僕は勝手に思い予約を入れたが、ゆかりっちの反応は意外なものだった。
「鶯谷園がいい」
「おいおい、鶯谷はホテル街で、風俗街で、あやしい男と女がXX…」
つまり、素敵なレディーのバースデーディナーに似つかわしくない場所だよと言いたかったのだが、それ以上言うと、ボロが出そうだったのでやめた。
ゆかりっちが鶯谷園を選んだ理由は、至極単純だった。候補の3店中、鶯谷園の食べログ評価は、4.0でトップ。そして安い、ということだった。なるほど、主婦の視点である。
早速予約の電話を入れたが、バースデー(平日)の夜は午後10時以降しか空いていないとのこと。なるほど、噂に違わず、予約必至の人気店のようだ。あらためて、その週末の日曜日に予約をとった。
店は、鶯谷駅北口から歩いて3〜4分、言問通り沿いにある。予約は午後6時だったが、期待に胸が膨らんでいたのか、15分前に着いてしまった。早い分には問題なかろう。いざ、入店。
昨年リニューアルしたという店内は、まだ真新しく、清潔感がある。鶯谷園という店名から、煙で煤けた老舗焼肉店を想像していたが、良い意味でそれは裏切られた。
「いらっしゃいませ。キクチ様ですね。お時間90分制になります」と受付のスタッフに告げられ、2階へと通された。バイキングでもないのに、時間制とはなかなか強気な商売だ。しかし、美味い店には、なぜか独自なルールがあったりするものだ。大阪・曽根崎の名前は明かせない焼肉店もそうだった。よろしい。受けて立とうではないか。6時前だというのに、2階席もほぼ満席である。期待値が一段と高まった。
「ご注文は?」
「瓶ビールとキムチ盛り合わせと、特上全部」
実に気持ちのいいオーダーだ。無煙ロースターに火が入れられ、すぐにビールとキムチが出てきた。まずは、ゆかりっちのバースデーに乾杯。
間もなく、注文した肉が続々とテーブルに並べられた。注文から配膳まで、見事な速さだ。時間制ゆえ、無駄なタイムロスは許されないのだろう。いざ食わんと早る気持ちを抑えて、スタッフに尋ねてみた。
「こちらはどこ産の肉なんですか?」
「国産和牛です」
「国産でもいろいろあるじゃないですか。松坂牛とか、仙台牛とか…」
「国産の美味しい肉です」
なるほど、企業秘密ということか…。今日はブランド牛を食べに来たのではない。美味しい肉がいただければ、問題ない。よろしい。
それから、ごくりとビールを喉に流し込み、食道を洗い、美味しい肉を食べる前の準備を整えた。よしっ、スタンバイOK!実食。
▼最初は、特上タン(塩)。意外なほどやわらかく、厚み、旨味とも申し分なし。
▼特上カルビ。文句なし!ほっぺたが落ちる美味さ。
▼特上ランプ。絶品。こだわり生玉子(50円)を溶いて、くぐらせて食べると、より味わい深くなる。
▼特上ヒレ。厚さ1cmほどある、まるでステーキ肉。味付けはあっさり塩胡椒。ポン酢につけて、さっぱりいただく。
▼厚切りハラミ。ハラミ特有の臭みはまるでなく、旨味よし、食べごたえあり。
▼大トロカルビ。口の中で脂身がふわっとほどける美味さ。クセになりそう。
▼締めに、もう一度、特上ランプ。ランプとは思えないサシの入り具合。こんなランプは食べたことがない。
90分1本勝負、終了!
90分、肉を堪能した。時間も必要にして、十分であった。
それにしても、鶯谷園の実力には感服した。言葉にすると陳腐になってしまうが、どの部位も文句のつけどころなく、美味しかった。中でも、特上ランプは極上品。僕もゆかりっちも、迷わず一押しで、締めに追加オーダーしてしまったほどだ。
さらに驚かされたのは、お会計。特上肉攻めして、飲んで、2人で12,000円だった。東京の焼肉店にしては、素晴らしいコストパフォーマンスである。「もう他では焼肉食べたくないね」とは、ゆかりっち談。今後も通い詰めること、必至である。
ごちそうさまでした。
【きょうの評価】★★★★★
●Shop Data
焼肉 鶯谷園
東京都台東区根岸1-5-15
電:03-3874-8717
営:17:00〜翌2:00
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