ゴールドコーストマラソン2015 苦行記(3)

海外マラソン

2015年7月5日、ゴールドコーストマラソン当日。よく晴れた気持ちの良い日だった。僕は世界中からやってきた約5,000人のランナーとともに、午前7時20分にサウスポートをスタートし、一路ゴールドコースト・ハイウェイを南へ走り、サーファーズパラダイスを抜け、いくつかの橋を渡り、いくつかの街を抜け、2回の折り返し地点をクリアし、数時間後に42km先にあるサウスポート・ブロードウォーター公園のゴールに到着した。

結果はどうだったか? 率直に言って、結果はあまり好ましいものではなかった。少なくとも、僕が内心ひそかに期待していたほどの結果ではなかった。僕としてもできることなら「しっかり準備をしてきたおかげで、ゴールドコーストマラソンでは素晴らしいタイムを出すことができた。ゴールインの時は、激走に驚く妻を涙ながらに抱きしめた」というような感動的なエンディングのことばを、このブログの最後に残してみたかった。正直なところ、実際にレースを走ってみるまでは、そういう展開になるのではないか、そういう展開になれば最高だ、という期待が僕の中にあった。

しかし、現実の人生においては、ものごとはそう都合よくは運ばない。リアルの神様は、時にいたずらに笑う…。

いよいよ当日、スタート!

午前4時、起床。冷えたオレンジジュースを一杯飲み干してから、ゆっくりトイレを済ませた。朝食はおにぎり、バナナ、お汁粉。仕上げにコーヒーを飲みながら、高濃度のアミノ酸の粉末を喉に流し込んだ。

ウェアに着替え、前夜用意したウエストポーチの中身をひとつひとつ確認する。エナジーゼリー3つ、粉末アミノ酸、塩飴、男梅の干し梅、脚がつった時のための漢方薬とサプリメント、iPhoneとヘッドホン…。

シューズは、練習で使ってきたアシックス・ゲルカヤノを履くことにした。ゆるくないように、きつくないように慎重に紐を結び、前日モーニングランで学んだストレッチで、股関節をほぐした。

体調は悪くなかった。休養も十分とった。きっと長旅の疲れもとれているはずだ。昨夜誤って飲んでしまった針金も、今のところ影響はない。大丈夫。これほど順調に練習を積み重ね、マラソンに臨んだことは一度もなかった。だから、今の僕なりのベストタイム(5時間30分台)は出せるだろうという期待があった。

スタート1時間半前、午前5時50分、ホテルを出た。スタート地点へはGラインがシャトルになる。大勢のランナーが乗車するため、一度で乗り切れないかもしれない。そこで、少し早めに出発したのだが、無事に乗車できた。サウスポート駅には10分ほどで到着した。

▼サウスポート駅到着。フルマラソン当日は、Gラインとバスが、無料のシャトル便になる。

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▼サウスポート駅近くのカフェでは、朝食を摂るランナーの姿も。

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スタート地点に着いたころ、空が明るくなり始めた。会場の公園にもランナーたちが続々と集まりだした。招待選手と思われるランナーは、繰り返しアップのジョギングをしていた。

僕とゆかりっちは、トイレを済ませてから、最後尾のスタートゾーン(Dゾーン)に移動した。ストレッチをして、体をほぐしながら、スタートを待った。

▼スタート直前まで、会場設営していた。これも大らかなオージー流?

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7時20分、スタートタイム。しかし、スタートのガン(号砲)は聞こえない。「これもオージーだからなのかな(笑)」とゆかりっちと話していると、人の列がスタートラインに向かってゆっくり歩き出した。少しずつ早歩きになり、ちょうど走りのスイッチが入った時、スタートラインを通過。こうして僕のゴールドコーストマラソンは始まった。

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前半:5km地点で、まさかのトイレ離脱。

順調なスタートを切った、と思った。練習ではキロ7分前後で距離を刻めるようになっていたが、少しゆっくり7分30秒前後で入れた。「マラソンは30kmから」という小出監督のことばを、何度か心の中で念じた。ゴールドコーストの爽やかな風が心地よかった。

ところが、3kmを過ぎたあたりで、トイレに行きたくなった。僕は過去2回のフルマラソンで、レース中に一度もトイレに行ったことはない。走っているうちに、そのうちやり過ごせるだろうと思ったが、どうも怪しい。5km地点で公共トイレが目に入った。僕の前を走る女性ランナーがそのトイレに駆け込むのを見て、同調するかのように、トイレに入ってしまった。

ロスタイム、約5分。

大丈夫、まだ序盤さ。そう自分に言い聞かせて、僕はまた走り始めた。6〜8ラップで、少しペースが上がったのは、今から思うと心中焦りが生じていたのかもしれない。

15kmを過ぎたあたりから、脚が少し重くなってきた。練習でも最長16kmまでしか距離を踏んでいなかったので、これは想定の範囲内。ここからどれだけ我慢できるかが、勝負だと思っていた。

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後半:22km過ぎ、右足甲に突然の痛み。その後は腰痛も。目標を完走に切り替える…

脚の重さは変わらず、ランニング・ハイへのスイッチが入らないまま、中間点を過ぎた。

太陽が高く昇るにつれて、気温は上がり、暑さを感じるようになった。汗腺という汗腺から、汗が噴き出し、給水所が待ち遠しくなった。僕は後半戦に備え、干し梅を何個も口に入れ、エナジーゼリーを1つ飲み干した。

そんな矢先の出来事だった。22km過ぎ。首に巻いていた冷却シートの位置を直そうと手を動かした時、右足甲からポキっといやな音がし、たちまち鈍い痛みに襲われた。これまで経験のない場所だった。ペースを落とし、様子を見たが、右足甲の痛みは治まらない。骨折か? 最悪の事態も想像した。動揺した。

25kmを過ぎた。右足甲の痛みは、それ以上ひどくなることはなかった。しかし、右足をかばいながら走り続けたためか、今度は左腰が重く張ってきた。ペースは落ちるばかり。いよいよ判断しなければと思った。このまま走り続けて5時間台を目指すか、完走に目標を切り替えるか。結果、無念だが、右足甲の負担を抑えながら、完走を目指すことにした。

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それから先は、昨年のホノルルマラソンでとった作戦、2km走って1km歩く作戦でゴールを目指した。後続のランナーが次々と僕を抜いていったが、気にならなかった。たぶん、それは僕が負けることに慣れているせいかもしれない。それにマラソンというスポーツは、やはり自分との戦いなのだと思う。

悪いことは続いた。30km過ぎで、再びトイレに駆け込んだ。またも、ロスタイム3分。これ以上ロスすると、完走すら、危うくなると思った。何としても、35kmと40kmの関門をクリアしなければ…。

40km地点で、一足早くゴールしたゆかりっちが待っていた。道中、沿道からのたくさんの声援や女子学生とのハイタッチにも大いに励まされたが、やはりゆかりっちの応援が一番うれしく、元気が出た。

ゴールが見えてきた。ラスト300m、残っていたチカラを振り絞って、スパートをかけた。ゴール直前で3人抜いた。このレースで最速ラップだった。

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結果:6時間16分50秒(ネットタイム)

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僕のゴールドコーストマラソンは、こうして終わった。期待した結果には遠く及ばなかったが、無事完走することができた。昨年のホノルルマラソンから半年、タイムだけで見れば、53分短縮。右足甲の痛みも大事には至らなかったようで、それはよかった。

けれど、今回のマラソンは率直にいうと、不完全燃焼に終わった。想定外のアクシデントがいくつかあったが、それも含めてマラソンというスポーツなのだろう。42kmを走るということへの難しさと怖さを初めて感じた。僕がこれからマラソンを走り続けるにあたり、多くの課題も見つかったので、それはまたあらためて書こうと思う。

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▲ゴール後の僕

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▲愛妻・ゆかりっち。ありがとう!

翌日、地元の新聞に、ゴールドコーストマラソンの結果詳細が掲載されていたので、スーパーで購入した。僕の残念な成績も載っていた。ゆかりっちは、3時間58分36秒で見事目標だったサブ4を達成した。

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