実践マネジメント基本の「キ」~春からマネージャーになるキミへ~ 【後篇】

仕事

今日は、僕の経験から話そう。
2年前の春、僕はとある受託プロジェクトに、後任のマネージャーとして赴任した。着任当時、そのプロジェクトは、最悪最低の状態だった。メンバーは誰しも戦意喪失、もはや惰性で業務時間をやり過ごし、長時間残業も当たり前。業務上のミスも頻発し、前任のマネージャーはメンバーの不甲斐なさと誹謗中傷を口にする有様。業務を委託するクライアントからの信頼も地に落ちていた。さて、この状況で、僕は何をしたか? 最初の1週間のアクションは、【前篇】に記した。今回は、その続きだ。僕のこのプロジェクトの経験を交えて、春からマネージャーになるキミへ、伝えておきたいことを話そうと思う。

働く目的と目標を、チームで共有する

チーム(のメンバー)がどちらの方向を向いて、何を目標に仕事をするか。それを設定するのは、マネージャーの重要な仕事だ。目的と目標の明確化は、早い方がいい。会社から部門目標というカタチで下りてくるものもあるだろう。しかし、それをスルーパスしてはいかん。きちんとキミの目で、現場を観察して、メンバーと共有できるカタチに翻訳しなければならない。

前段で紹介したプロジェクトでも、会社からは顧客満足度の向上やら、ミスゼロなどの目標が下りてきた。しかしまぁ、戦意喪失状態のメンバーにそのまま、この目標が通じると思う? 思わないでしょ。だから、僕はメンバーの心の萎んだ風船に、空気を吹き込むことが大事だと考えた。ひとりひとりと対話し、会社の目標を、自分事の目標に置き換えて、メンバー全員と共有した。何のためにこのプロジェクトで働くのか(目的)=「自分自身が成長する」。そのためにまず何を目標とするか=「残業ゼロ」。その結果、常態化していた長時間の残業はほぼゼロになり、業務上のミスも激減した。おっと、手前味噌な話でスマン。

でも、ここだけは重要だ。チームが成長すれば、必ず会社の目標も達成できる。自分のチームとメンバーを信じて、現場から目的と目標設定をしよう。

一日一(改)善

ちょっと逆から想像みるといい。もしも、毎日変化なく、同じメンバーが同じ仕事をし、日々をやり過ごしていたら、そのチームはどうなるか。チームはぬるま湯体質になり、変化を拒むようになる。やがては、バレなければいいと、悪さをしだす輩が出てくる。こうなったら、末期的症状。つまり、チームの成長はそこで止まってしまう。マネージャーは失格だ。若き日の僕にも経験のあることだ。

そうならないためにも、毎日、一つ改善していこう。どんな些細なことでもいい。チームやメンバーの日常、仕事ぶり、職場環境を観察して、改善を試みよう。マネージャーが率先して、毎日続けることに意味がある。改善とは、すなわち変化であり、今風にいうならイノベーションの萌芽だ。小さなカイゼンの積み重ねは、大きな変革への土壌づくりとなる。

プロジェクトで「残業ゼロ」を目標に掲げた僕は、それを達成するための改善を毎日重ねた。無駄と思える仕事を見つけたら、止めさせる。朝会で、一日の予定を時間入りで報告しあう。定時1時間前になったら、業務の進捗を聞いて回る。定時5分前になったら、声掛けして、机の上を片付けさせる、などなど。実は成果が出るのに、それほど時間はかからない。マネージャーが率先して改善していると、チーム(メンバー)は主体的に変わろうとしだすからだ。そうなったら、シメタもの。マネージャーの仕事はひとつ減る。

毎日朝会で、良い話をしよう。

毎日、メンバー全員で、朝会をしよう。シフト制などの職場の場合は、なるべく全員が顔を合わせられる時間で調整する。内容は各自予定の報告、業務連絡、GOOD&NEW(良いこと&新しいこと)など、それぞれの状況に合わせて行えばよい。いや、それこそ、ちょっと違うなぁと思ったら、すぐ改善すればいい。

朝会は、メンバーの心の風船を膨らませる格好の場だ。特に、メンバーを褒める場として効果的だと思う。褒めるときはみんなの前で。叱かるときは人目のないところで、マン・ツー・マンで、が鉄則だ。日ごろからメンバーの仕事ぶりをよく観察していて、ファインプレーがあったら、どんな些細なことでも忘れずに褒めよう。

僕は毎朝30分の通勤時間中で、「今日はどんな話をしようか」と、いつも考えていた。電車の中では中刷り広告や新聞をながめ話のネタを拾い、メンバーのファインプレーや読んだ本のグッドフレーズを整理したりした。それでも、どうしても話のネタが浮かばない時は、どうする? そんなときは、メンバーに話の主役を代わってもらうといい。「最近、メンバーの中で感謝したい人いる?」とか、「職場で改善したいところを、みんなでひとつずつ挙げよう」とか、ね。とにかく、良い話であればOK! メンバーの心の風船を膨らませることに努めよう。「営業数字が足りない」なんて、気が重くなる話に終始しちゃダメダメ。

まとめ

春からマネージャーになるキミへ、昇進おめでとう。キミはプレーヤーとしてだけではなく、これからはマネージャーとしての仕事をしなければならない。

マネージャーの仕事とは何だろう? それは、文字通り「管理する」ことだ。いいかい?「監視する」ことではないよ。そこを間違えている人が、実に多い。指示を出して、経営資源たる人・モノ・金・情報をウォッチして、メンバーを叱責しているだけでは、マネージャーとは言えない。数字を上げるだけでもダメ。

これだけは憶えておいて。「管理する」とは、チームとメンバーを成長させることなんだ。チームは成長すると主体的に動き出す。そうすれば、おのずと成果は出て、マネージャーのキミは、ワンランク上の仕事にチャレンジできるようになる。すると、チームはさらに成長する……そんな好循環を生み出すことが、「管理する」という仕事の本質だと思う。

最後に、僕が尊敬してやまない帝京大学ラグビー部・岩出雅之監督の言葉を贈ろうと思う。「指導」を「管理」と読みかえてほしい。

「指導とは、上り坂で、荷車を押すようなもの」。

そう、マネージャーに大切なのは、マネジメントスキルよりも、まず「根気」と「情熱」なのだ。

実践マネジメントに役立つおすすめ本

▼前人未到の大学日本一6連覇、帝京大学ラグビー部・岩出雅之監督の著書。平成生まれの若者をいかに活かすか。いかにしてチームに主体性を持たせるか。ビジネスマンにも役立つヒントが満載。

▼マネジメントの神様、P.F.ドラッカー先生の数ある著作の中から、新任マネージャーが読むべきは、この一冊。

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